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袋の中の住宅ローン債権に関して、突如、債務不履行が続出し始めた。
住宅市場の永久の値上がり神話が崩れて、値上がり益を見込んでいた借り手の債務返済が行き詰まったのである。
これで、福袋の中身は一気に価値を失った。
大損失を蒙った投資家たちはもとより、彼らに投資資金を用立てた金融機関や第二・第三の投資家たちにも、むろん、損失が波及した。
CDOのシニア債保有者といえども、最終的には難を免れなかったケースが多い。
それについては、そもそも、担保となる債権に関する格付け会社の評価が甘かったという問題がある。
甘くなる原因は、格付け会社が証券化商品の発行元からの依頼で評価を行うからである。
サブプライム問題が深化する中で、格付け会社たちはこの利益相反問題を巡って大いに世界の鍾愛を買った。
この問題に加えて、金融恐慌が深まり、その影響が幅広く波及する中で、当初はまさしく優良債権であった債権が不良債権化してしまうということも起こった。
福袋の中身の質が、売り出し後に劣化してしまうということである。
これには、誰もなす術がなかった。
合成の誤謬という悪魔債権の証券化は、資金の流動化を促し、リスクを分散する手段として、グローバル金融の効率化に大いに資する手法だといわれて来た。
それに一理あることも間違いないだろう。
だが、一人にとってのリスク分散は、実をいえば全員に対するリスク拡散だ。
自分だけリスクを免れようとして取る行動が、全員をリスクのただ中に放り出す。
その結果、世界の金融市場が危機に陥れば、うまくリスクを回避したはずの当初の一人も、結局はその影響を免れない。
一人にとっての正解が、全員にとっては巨大な不正解をもたらしてしまう。
部分最適の総和が全体最適だとは限らない。
この現象を、世に「合成の誤謬」という。
債権の証券化という金融手法の中には、壮絶な合成の誤謬の悪魔が潜んでいたのである。
ツケの福袋を火星人に売り渡すなら話は別だ。
だが、地球上で福袋のやり取りをしている限り、いつ、この合成の誤謬が牙を剥くか解らない。
こうしてみれば、ひとたび、どこかで誰かが債権の証券化をやりだせば、誰もその影響と無縁でいられる保証はない。
既述の通り、ことの発端となった証券化商品をみたことさえない人々も、とばっちりを受けて破綻の憂き目をみることになる。
直接的には無関係でも、長い信用創造の連鎖の中で、サブプライム問題という名の爆弾の導火線がどう体に巻きついてしまっているか解らないのである。
世にいうサブプライム問題とは、要するにこのようなものだ。
証券化が引き起こす恐怖住宅バブルへの道ところで、サブプライム・ローン問題の背景には、先述の通り、アメリカの住宅バブル問題がある。
住宅市場の過熱状態とそれを煽った低金利環境がなければ、サブプライム・ローン・ビジネスがここまで膨らむことはなかったはずである。
したがって、サブプライム・ローンの証券化ビジネスも、グローバル恐慌を引き起こす引き金となるようなところまでは広がらなかったに違いない。
その意味で、諸悪の根源は住宅バブルにあり、という言い方も出来るわけである。
そうした住宅バブルの萌芽がアメリカで形成され始めたのは二○○○年のことである。
むろん、これがアメリカにおける初の住宅バブルだったというわけではない。
過去においても、バブル的な状況が生起した際には、大なり小なり不動産市場がその一翼を担っていた。
ただ、今回のケースはもっぱら住宅が主役で、しかもそれが地球経済を巻き込む恐慌発生へのきっかけとなったという点において、特筆に値するといえるだろう。
二○○○年という年は、ちょうどそれまでのいわゆるドットコム・バブルが崩壊した年の連鎖の中で、いつのまにやら、誰もが一蓮托生の鎖につながれてしまったわけである。
である。
エンロンやワールドコム社の不正会計事件がさかんにメディアをにぎわせた。
それに伴う金融危機の発生や実体経済への悪影響を懸念して、FRBは矢継ぎ早の金利引き下げをもって対応した。
当初六・五%であったフェデラル・ファンド・レート(FFレート)を、わずか数カ月の間に三・五%まで引き下げたのである。
年が変わって二○○一年には九・二事件が発生した。
非常時対応でFRBはさらに利下げスタンスを強化し、二○○三年時点ではFFレートが一%まで低下していた。
当時のインフレ率は二%弱という水準にあったから、この間のアメリカ経済は実質金利がマイナスの状態下にあったということになる。
このような金融環境が整えば、バブルが起こらないはずはない。
実質金利がマイナスだということは、いわばカネを借りることに対して補助金が支払われるということだ。
カネを借りれば借りるほど得をする。
金融機関にとっては、資金調達の観点からは願ってもない環境だ。
ただし、貸し出し金利に対しても下押し圧力がかかるから、利ざやが取り難いという問題はある。
だが、それも貸し出しの量が確保出来れば問題はない。
そこで脚光を浴びたのが、サブプライム方式の住宅ローンであった。
当時、住宅ローン市場は構造的にも需要が盛り上がる環境にあった。
ヒスパニック系やアジア系の移民たちの中で、住宅取得意欲が高まっていたのである。
相対的に若い世代の移民たちの収入と生活がそれなりに安定し、本格的なマイホームを手に入れたいと思う人々が増えていた。
ただ、そのような移民世帯の中には、プライムレートを適用するには所得水準が不十分なケースも少なくなかった。
そこでサブプライム・ローンを組むことになるわけだが、実質金利がマイナスという金利環境の中では、サブプライム・レートといっても、限りなくゼロに近い設定が可能であった。
こうして、低所得者向けの低金利ローン・ビジネスが盛行するようになる。
この展開が大きく寄与して、住宅ブームに勢いがつく。
住宅価格はFFレートが一%まで低下した二○○三年から二○○四年にかけて急上昇し始めた。
前年比二桁の伸びが続く展開となり、二○○六年までその勢いが続いた。
その後は住宅価格も反転することになるのだが、サブプライム・ローンの組成は止まらない。
むしろ、住宅価格を下支える観点から、よりアグレッシブにローンを押し売りする傾向が強まることになった。
返済能力がない相手にも、無理にローンを組ませることで、住宅市場の活況を維持しようとしたわけである。
このころから、住宅バブルの崩壊とサブプライム証券化問題発生への火種が形成されていくこととなる。
ファニーとフレディそこで、ファニーメイとフレディマック問題に戻ろう。
彼らはどのような経緯でサブプライム証券化問題に翻弄されたか。
そのあらましは次の通りだ。
ファニーメイとは連邦住宅抵当公社。
頭文字のFNMAをファニーメイに読み替えて、親しみ易さを出した。
フレディマックは連邦住宅貸付抵当公社だ。
FHLMCである。
これをフレディマックと読ませるのはかなり苦しいが、ファニーのパートナーだから、そこはなんとかご理解を、というわけだ。
ファニーメイの設立は一九三八年である。
フランクリン・ルーズヴェルト政権が、住宅ローン市場の拡充を目指して開設した。
ニューディール政策の一環を担う政府機関として業務を開始したのである。
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